【台風19号】北陸新幹線の車両が車両基地で浸水

東日本を縦断した大型台風19号、事前に異例といえる気象庁からの警告があったとはいえ、各地に想像を絶する大きな爪跡を残しました。

被災された方には、心よりお見舞い申し上げます。

長野新幹線車両センターが浸水、E7系/W7系電車が水没

交通機関にも多くの被害が出ました。

中でも映像で衝撃的だったのは、北陸新幹線の車両基地である、JR東日本の長野新幹線車両センターが浸水したことです。

北陸新幹線 車両浸水 全体の3分の1 専門家「最悪 廃車か」

(NHK NEWS WEB 2019/10/13付)→記事

記事にあるように、留置していた10編成(120両)が水につかってしまいました。

北陸新幹線用の車両は、現在はJR東日本のE7系19編成とJR西日本のW7系11編成、合計30編成が使われています。このうち、ちょうど3分の1にあたる編成が被災したことになります。

また、車両センターのすぐ横を通る北陸新幹線の本線も、国土地理院が提供している空撮画像で見ると、一部が泥水の中に消えていて、冠水したようです(この区間、線路は高架ではなく地平近くを走っています)。


Googleストリートビューで新幹線本線の冠水個所を見てみると、線路の高架橋がかなり低い位置を通っていることが分かります。

…とはいえ、地面から若干の高さはあるので、ここが冠水したということは、どれだけ大量の水があふれ出たかがうかがい知れます。

現状の運転状況

10月15日時点で、北陸新幹線は長野新幹線車両センターを挟む区間、長野-上越妙高間が不通。

「かがやき」は全列車運休。「はくたか」も東京-上越妙高間を運休。東京-長野間の「あさま」、上越妙高-金沢間の「はくたか」で特別ダイヤが組まれています(「つるぎ」は通常ダイヤで運転)。

「あさま」の特別ダイヤは、東京駅の発着時刻は通常ダイヤの「かがやき」「はくたか」「あさま」のものを使いつつ、東京-長野間を各駅停車で運転するパターンが基本。例外的に、上りの朝一番となる「あさま400号」(通常ダイヤの「あさま600号」に近い時刻)は本庄早稲田と熊谷を通過するほか、上り朝の時間帯の「あさま602号」「あさま604号」にあたる列車は運転されず、代わりに高崎-東京間各駅停車の「たにがわ50号」「たにがわ52号」が運転されています。

余談ですが、特別ダイヤで高崎-長野間を運転するすべての「あさま」が安中榛名に停車するので、安中榛名の停車本数が通常ダイヤよりも増えています。

「あさま」の普通車は全車自由席。グリーン車は当日発売、グランクラスは非営業となっています。

一方、「はくたか」の特別ダイヤは、上越妙高(一部列車は糸魚川)-金沢間の「はくたか」通常ダイヤと同じ時刻に、号数を「マイナス100」した列車を走らせるというもの(例えば、通常ダイヤの「はくたか551号」と同じ時刻には、糸魚川-金沢間運転の「はくたか451号」を運転)。12両中普通車4両のみ乗車可能(自由席)という、極めて変則的な扱いになっています。

▼JR東日本の列車運行情報ページ https://traininfo.jreast.co.jp/train_info/service.aspx

▼JR西日本の列車運行情報ページ http://trafficinfo.westjr.co.jp/list.html

復旧の見通し

今後の復旧見通しについては、JR東日本のプレスリリースによると、「信号関係の電源装置に甚大な被害が確認されており、この電源装置の復旧に概ね1〜2週間程度かかる見込み」とのこと。ただし、この他に被害が確認されれば復旧までの期間が延びる可能性もあります。

また、全線での運転再開となっても、多数の車両が被災したため、運転本数は「これまでの5〜6割程度」となる見込みとなっています。あくまで推測ですが、中間駅の利便性を極力確保するために、「はくたか」を優先的に運転し、その分速達タイプの「かがやき」の本数が減る(もしくは全列車運休)のではないでしょうか。

通常ダイヤ復帰を阻む、北陸新幹線特有の事情

北陸新幹線は、他の新幹線路線とは異なり、比較的標高の高い地域を貫き、かつ、日本列島の東西にまたがる区間を走破します。それが故に特有の事情をいくつか抱えていて、これらが今後の復旧にも大きな影響を与えそうです。

まず、電源方式の問題。

在来線とは違って、新幹線は全線交流電化です。しかし、沿線の電力会社によって、周波数が50Hzと60Hzとに分かれます。これがかなりややこしくて、

と、何度も電力会社のエリアをまたいでいき、その度に周波数が変わっていきます。

ちなみに、東海道新幹線も富士川を境に以東が50Hz区域(東京電力)、以西が60Hz区域(中部電力・関西電力)と両者にまたがっています。ただ、こちらは、将来の山陽区間への延伸も考慮して、50Hz区域でもわざわざ周波数を60Hzに変換して電力を供給しています。N700系車内のAC電源コンセントには、周波数が「60Hz」であると書かれています。

話を北陸新幹線に戻すと、こういった事情から、線内を走る車両は50Hz/60Hzの両方に対応していなければいけません。

かつて、長野開業以来走っていたE2系N編成は、これに対応していました。

しかし、残念ながらこの編成はE7系投入と引き換えに全編成廃車されて現存しません。

次に、急勾配区間の問題。

在来線で高崎-軽井沢間を移動するには、碓氷峠の最大66.7‰の急勾配を越える必要がありました。

新幹線でも安中榛名-軽井沢間で、トンネル内では最大30‰の勾配区間があります。そのため、この区間を走る車両は、勾配対応の装備(下り勾配で定速走行するための抑速ブレーキなど)が必要です。

以上の2点をクリアした車両だけが、北陸新幹線に乗り入れることができるわけです。

他路線の車両の応援は?

今後、浸水被害を受けた10編成を補修するまでは、残る20編成でやりくりしなければなりません。

ただ、他にも先の2点をクリアできる車両があります。

(1)上越新幹線用のE7系

E7系は、北陸新幹線用には増備を終了しましたが、今度は上越新幹線用に増備を開始しています。「新幹線EX Vol.52」によると、今年4月1日現在で3編成が在籍。その後、もう1編成が加わり、都合4編成となっています。

これらは、北陸新幹線用の編成と仕様は共通とされています。一部の編成は上越新幹線用に帯の色を変えているなど外観上の相違はあるものの、それに目をつぶれば応援で入線する可能性はありそうです。

(2)E4系

これが伏兵。最近は徐々に数を減らしつつあるE4系のうち、4編成は多客期の軽井沢乗り入れを想定して急勾配区間対応装備を持ち、さらにそのうちの2編成は長野乗り入れを想定した50Hz/60Hz両周波数対応車となっています。

今年4月1日現在では全編成現存、その後も運用離脱のニュースはないので稼働中と思われます。

しかし、E7系とは最高速度が異なるので同じダイヤでは運転できず、また、編成両数やドア位置が異なるので各駅のホームドアの扱いが難しいといった問題があります。

E4系が乗り入れてくるとしたら、通常ダイヤ復旧が2020年までずれ込むような事態。年末年始の多客期に車両が足りず、特別ダイヤに加えて臨時列車(「Maxあさま?」)が設定されるというケースでしょう。

 

最後に、被災各地の一日も早い復旧をお祈りいたします。

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