【乗継割引】新幹線-在来線で適用されるパターンは?

JRで新幹線と在来線特急とを乗り継ぐ時にお世話になるのが、「乗継割引」のルールです。

以前は全国各地で適用されるパターンが多く見られましたが、気が付くと、最近はパターンが変わってきたようにもみえます。ちょっと気になったので、今回は2019年時点で新幹線と在来線との間に適用される「乗継割引」をまとめてみました。

乗継割引とは

まず定義から。新幹線と在来線との間に適用される乗継割引とは、

決められた駅で、

(a)新幹線から在来線の特急・急行列車へその日のうちに乗り継ぐ場合、または

(b)在来線の特急・急行列車から新幹線へその日かその翌日のうちに乗り継ぐ場合に、

在来線の特急・急行料金、指定席料金が半額になる

 

というものです。

【リンク】JR東日本旅客営業規則 第57条の2(乗継急行券の発売)

なお、定義としては在来線の急行料金も対象に含まれますが、JRではすでに定期列車の「急行」は全廃されているので、ここから先の説明では省略します(現在でも、臨時列車の急行で条件に該当すれば、急行料金に乗継割引が適用されます)。

このルールを適用して購入した特急券には、「乗継」マークが付いています。

(北陸新幹線金沢開業前、上越新幹線と「はくたか」を乗り継いだ時の特急券。2015/01/10撮影)

乗継割引を適用させるには、新幹線と在来線の特急券を同時に購入する必要があります。上の写真のきっぷには「えきねっと発券」と印字されていますが、JR東日本のインターネット予約サービス「えきねっと」で同時購入して乗継割引を適用させたものです。

なぜこの制度ができたかというと、新幹線が開業するにあたって、それまで在来線の特急1本で移動できた区間が新幹線と在来線の乗り継ぎになってしまう場合に、単純に両者の特急料金を合算すると割高感が増すので、それを緩和するためです。

最近だと、2015年の北陸新幹線長野-金沢間開業によって、「サンダーバード」で移動可能だった大阪-富山間が金沢で分断され、金沢-富山間をJRで移動するには新幹線の利用が必須となりました。まさにこのようなケースのために乗継割引があります。

乗継割引が適用される乗り換え駅

それでは、2019年現在で乗継割引の適用対象となっている乗り換え駅はどこでしょうか。

「JR時刻表」のピンクのページに載っているのは、以下の9種類です。

1.東海道・山陽新幹線の新横浜〜新下関間の新幹線停車駅

2.東北新幹線及び北海道新幹線の新青森駅

3.上越新幹線の長岡駅・新潟駅

4.北陸新幹線の長野駅・金沢駅

5.北海道新幹線の新函館北斗駅

6.大阪駅(新大阪駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

7.坂出駅・高松駅(岡山駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

8.直江津駅(上越妙高駅に直通して運転する在来線の特急・急行列車に乗車し、上越妙高駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

9.津幡駅(金沢駅に直通して運転する在来線の特急・急行列車に乗車し、金沢駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

一見、たくさん指定されているようにみえますが、実はかなり制限が掛かっています。

東海道・山陽新幹線の新横浜〜新下関間の新幹線停車駅

おそらく乗継割引の利用頻度が最も多いであろう、東海道・山陽新幹線。両端の2駅ずつが除外されていますが、大部分の駅は乗継割引の対象となっています。

特に京阪神地区では、京都駅と新大阪駅が対象となっていることで、多くの在来線特急列車が乗継割引適用可能です。

賢い使い方としては、新大阪駅から北陸方面へ行く時に、「サンダーバード」の特急券を大阪駅から買うのではなく、新大阪-京都間の新幹線自由席特急券と京都以遠の「サンダーバード」の特急券の同時購入にして乗継割引を適用させ、合計の特急料金を安くする方法があります。

新大阪-金沢間の特急料金(通常期、在来線は普通車指定席利用)

■全区間在来線=2,950円

■新大阪-京都間を新幹線自由席利用=2,340円

(新幹線自由席特急券:870円、在来線特急券【乗継割引適用】1,470円)

この場合、新大阪-京都間は新幹線・在来線どちらに乗ってもよいので、乗り換えの時間が合わない、自由席が混みそうな時間帯であるなどの事情があればあえて新幹線には乗らず在来線移動にしても構いません。ただし、当然ながら京都まで「サンダーバード」は使えません。また、新大阪-京都間の新幹線特急券は自由席にしないと割が合いません。「隣り合う駅間の自由席特急料金が割安に設定されている」という、新幹線特急券特有のルールを生かしたものだからです。

さて、東京側・博多側双方で対象から外されている駅があるのは気になるところです。

東京側の2駅については、まず東京駅はもともと対象外。東京駅は新幹線開業前から各地へ向かう優等列車の始発・終着駅だったので、新幹線開業によって系統が分断されるという色彩が薄く、制度趣旨にはそぐわなかったのです。

同様に、品川駅も2003年の開業時から除外されています。品川駅といえば、上野東京ラインの開業によって常磐線の特急「ひたち」「ときわ」が発着するようになりましたが、新幹線との乗継割引は適用されません。

一方の博多側の2駅(小倉駅・博多駅)については、1975年3月の山陽新幹線岡山-博多間開業によって大阪-九州間の在来線特急が系統分断されたことから、開業以来乗継割引の対象となっていました。しかし、2011年3月の九州新幹線博多-新八代間開業と同時に、対象から除外されています。

この結果、九州新幹線の沿線とはあまり関係ない、日豊本線(「ソニック」「にちりん」「にちりんシーガイア」)や長崎本線・佐世保線(「かもめ」「みどり」「ハウステンボス」)の特急と新幹線とを乗り継ぐ場合は、実質大幅値上げとなってしまいました。

東北新幹線及び北海道新幹線の新青森駅

東北新幹線については、1991年6月の東京開業時点では東京駅・上野駅・大宮駅以外の全駅が乗継割引の対象となっていました。東北新幹線が「背骨」とすれば、各駅で接続する在来線の特急・急行は「肋骨」のように、ネットワークを形成していました。

しかし、東北新幹線の延伸や山形・秋田新幹線の開業によって、東北地区の特急ネットワークはほとんどが新幹線に置き換わってしまいました。

そのため、2002年12月の盛岡-八戸間開業時に対象が八戸駅のみに縮小。2010年12月の八戸-新青森間開業時には、八戸駅が除外され、代わりに新青森駅が対象に指定されています。とはいえ、新青森駅も北海道新幹線開業後は函館方面の在来線特急が全廃されたので、適用されるのは弘前・秋田方面の「つがる」との乗り換えに限られている状態です。

上越新幹線の長岡駅・新潟駅

2010年12月に、東北新幹線と同時に乗継割引対象駅が見直され、越後湯沢駅・長岡駅・新潟駅のみに縮小。2015年3月の北陸新幹線長野-金沢間開業で越後湯沢駅での「はくたか」乗り換えがなくなったのを機に越後湯沢駅が除外されて現在に至っています。

定期列車の在来線特急としては、長岡駅での「しらゆき」、新潟駅での「いなほ」が対象。いずれの系統も、上越新幹線開業前は上野発着の直通特急が運転されているので、乗継割引本来の意味を残しているともいえます。

北陸新幹線の長野駅・金沢駅

北陸新幹線の場合、開業と同時に並行在来線がJRから経営分離されたので、JRの在来線と乗り継げる駅自体が限られています。

よって指定されている駅も少ないのですが、富山駅が対象になっていないことに要注意。北陸新幹線と「(ワイドビュー)ひだ」との乗り継ぎは割引対象外です。

経営分離した第3セクター線にJRから乗り入れてくる在来線特急との乗継割引については、あとで登場します。

北海道新幹線の新函館北斗駅

津軽海峡を挟んだ本州と北海道の特急利用については、青函連絡船の時代から北海道側の特急料金が半額になる乗継割引制度が設けられていました。青函トンネル開業、東北新幹線延伸を経てもその制度は維持され、現在の新函館北斗駅乗り換えでの適用に至っています。

なお、乗り換える方向は限定されていないので、新函館北斗駅で函館方面へ乗り換える場合でも、乗継割引の対象になります。新函館北斗-函館間の自由席特急券は320円のところ、乗継割引を適用させれば160円となり、シーズンオフで特急の自由席が空いていそうな時期ならちょっとの追加出費で快適な在来線アクセスを使うことができます。

大阪駅(新大阪駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

東海道新幹線の大阪ターミナルが大阪駅ではなく新大阪駅となったことに伴う特例。夜行列車全盛の時代は、九州方面へ向かう列車で大阪止まりだったものがあり、この特例はその名残りかもしれません。現在では「はまかぜ」や「らくラクはりま」が大阪発着なので、この特例の適用対象です。

坂出駅・高松駅(岡山駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

本州-北海道連絡と同様、本州-四国連絡についても、宇高連絡船の時代から寝台特急「瀬戸」と高松発着の四国内特急・急行との間で乗継割引制度が設けられていました。現在の「サンライズ瀬戸」でも同様の制度が維持されていますが、新幹線-快速マリンライナー-四国内特急の乗り継ぎも対象になっています。

直江津駅(上越妙高駅に直通して運転する在来線の特急・急行列車に乗車し、上越妙高駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

北陸新幹線の特例その1。平たく言えば、上越妙高駅で新幹線と特急「しらゆき」とを乗り継ぐ場合が対象です。

ならば直接そう指定すればいいのに、なんでややこしい指定の仕方になっているかというと、「しらゆき」がえちごトキめき鉄道に乗り入れている直江津-上越妙高間の特急料金(JR線とは別に設定されていて大人210円・子ども110円)は乗継割引の対象外だからです。だから、厳密には「しらゆき」の特急料金は乗継割引適用後も半額にはなりません。

JR線としては「しらゆき」の乗車区間は直江津以東なので、JRの規則として乗り継ぎ対象駅としては直江津駅が指定されています。ただし、えちごトキめき鉄道線内だけ普通列車を利用する場合は乗継割引の趣旨から外れるので、カッコ内の限定が付いているのだと思われます。

津幡駅(金沢駅に直通して運転する在来線の特急・急行列車に乗車し、金沢駅で新幹線と乗り継ぐ場合に限る)

北陸新幹線の特例その2。金沢-津幡間がIRいしかわ鉄道の路線なので、金沢駅での北陸新幹線と七尾線方面の特急(「サンダーバード」「能登かがり火」「花嫁のれん」)との乗り継ぎの場合に適用されます。こちらも、IRいしかわ鉄道・金沢-津幡間にはJRとは別建ての特急料金(大人210円・子ども110円)が設定されていて、半額となる対象からは外されています。

まとめ

こうして見ていくと、やはり新幹線網の整備が乗継割引の適用パターンの変動に大きく影響しているようです。特に、並行在来線の経営分離は、乗継割引の世界にも複雑さを生み出していて、今後の新幹線建設でも同様の経営分離が進めば、複雑さは増していくかもしれません。

最後に、乗継割引ではありませんが、新幹線と在来線特急の乗り継ぎに関するちょっと変わったルールがかつて存在した件について。

(2004年3月13日の九州新幹線新八代-鹿児島中央間開業当日に使用した、「新幹線特急券」)

九州新幹線は現在でこそ鹿児島ルートの全線が開通していますが、2004年〜2011年の間は南半分の新八代-鹿児島中央間のみが開業していて、残る博多-新八代間は在来線の特急「リレーつばめ」による連絡となっていました。

その際、「リレーつばめ」と新幹線「つばめ」の特急券を同時購入すると、なんと画像のように両者が1枚の「新幹線特急券」として発券されたのです。

特急料金についても、別々に買えば通常期の普通車指定席で博多-新八代間2,180円、新八代-鹿児島中央間2,910円の合計5,090円となるところ、通しで買えば4,060円と割安に設定していました。

新八代駅での途中下車不可(同一ホーム乗り換えだった)など通常の乗継割引とは異なる点もありますが、新幹線開業に伴う負担軽減という意味では同様の趣旨の料金措置だといえます。

2022年度末には九州新幹線西九州ルートの武雄温泉-長崎間が部分開業し、武雄温泉駅では在来線と同一ホーム乗り換えとなる予定ですが、開業後には同じような料金設定が行われるかもしれません。

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