【東海道・山陽新幹線】総合指令所は2つある!
新幹線の「頭脳」といえば、総合指令所です。
壁面に新幹線全線を表したボードが並び、司令員が高い緊張感で机に向かっているという光景は、子ども向けの図鑑本でも紹介されていて、子ども心に憧れを覚えたこともあります。
(京都鉄道博物館の展示物として再現された山陽新幹線の総合指令所ボード。2016/09/25撮影)
大阪の第2総合指令所で訓練実施
さて、先日この総合指令所がニュースになりました。
-2019/12/07付 静岡新聞電子版
通常は東京の総合指令所で管理している東海道・山陽新幹線、毎年1日だけ、大阪の第2総合指令所で運行管理する訓練をしているのです。
阪神・淡路大震災を契機にして、東京の総合指令所が災害などで機能不全になった場合でも東海道・山陽新幹線が運行できるようにと、1999年に大阪に第2総合指令所が設置されました。この日の訓練は、実際に狙い通りにバックアップ機能が果たせるかどうかのものだったのです。
この第2総合指令所、司令員が戸惑わないように、東京の総合指令所と機能はまったく同じ。普段は使われないものの、最新の列車ダイヤのデータを東京から転送していつでも使えるように準備しておくほか、万が一東京の総合指令所が使えなくなった場合には近隣各地から直ちに司令員が集まって機能が立ち上がるようになっているとか。
なお、第2総合指令所の場所は「大阪某所」とまでしか公開されていません。
確かに、テロ攻撃とか受けると日本の社会経済に与える影響は甚大です。当然の対応でしょう。
東京の総合指令所については…なんとなく、あのビルに入ってるのかなあという目星は付いていますが、その件については秘密ということで。
東海道・山陽新幹線の総合指令所には、JR九州の司令員もいる
一連のニュース記事を読んで改めて驚くのは、東海道・山陽新幹線の総合指令所にJR九州の司令員も常駐しているということです。
実は、東海道・山陽新幹線と九州新幹線の運行管理システムは別々のものです。東海道・山陽新幹線は「COMTRAC」(コムトラック、Computer aided Traffic Control System)なのに対して、九州新幹線は「SIRIUS」(シリウス、Super Intelligent Resource and Innovated Utility for Shinkansen management)と呼ばれるシステムを使っています。また、九州新幹線の総合指令所は福岡にあります。
ではなぜ東海道・山陽新幹線の総合指令所にJR九州の司令員がいるかというと、山陽新幹線との直通を行っていることによる指令機能の連携のためです。特に、各新幹線でダイヤの乱れが発生した場合に、ほかの新幹線にそれがなるべく影響しないように調整する使命が託されています。この対応は、2011年3月の九州新幹線博多-新八代間開業に先立って「COMTRAC」と「SIRIUS」とが接続したことから行われています。
新幹線の総合指令所といえば、やはりあの映画が
“時速80km以下になると爆発する爆弾を仕掛けられた「ひかり109号」の運転士に、総合指令所からストップウオッチ片手に事細かに指示を出す司令長”のシーンが印象的な、映画『新幹線大爆破』。
興行成績がパッとしなかったからか、テレビで何度も放映されているので、この映画で新幹線の総合指令所の様子を覚えた人は多いかもしれません。
この映画、花形列車である新幹線に爆弾が仕掛けられるという刺激的な内容なので、当時の国鉄が撮影完全非協力のまま製作されたというのは有名な話。もちろん、総合指令所のシーンも映画会社の撮影所に組まれたセットで、本物ではありません。
そもそも、「発車前の列車の台車内に爆弾を取り付けることが可能か」に始まって、「走行中に列車種別を切り替えることに意味があるのか」「救援車で爆弾除去用の工具を送り込むとき、ドアを開けたまま高速走行できるのか」等々、鉄道趣味的にはツッコミどころ満載の作品(当然、技術面での国鉄監修はなし)。あくまで架空の出来事としてのエンターテイメントとして見るべきものでしょう。
なお、細かいツッコミなど各種検証については、『新幹線エクスプローラ』Vol.42に詳しい記事があります。
主犯役の高倉健、司令長役の宇津井健、そして羽田空港でのエンディングでおいしいところを全部持って行ってしまう刑事部長役の丹波哲郎と、残念ながら故人となってしまったキャストも多くなりました。作品はDVDやBDで映像化されているだけでなく、動画配信サービスでも安価で見られるので、昭和の新幹線を懐かしむ意味で改めて見直してみるのもよいでしょう。
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