【新函館北斗駅】秘孔を突いてみた

新函館北斗駅の1Fには、一瞬「?」と思う銅像があります。

漫画「北斗の拳」の主人公、北斗神拳伝承者のケンシロウ。

なぜケンシロウ像がここに建っているかというと、単に「北斗」つながりの縁だそうです。これは公式コラボレーションで、新幹線開業に合わせて、原作者など関係者が出席しての除幕式が行われました。

ケンシロウが操る北斗神拳といえば、相手の急所である「秘孔」を突いて決着を付けるシーンが有名。

そこで、今回は新函館北斗駅の「秘孔」を突いてみました。

秘孔その1=函館駅から遠い

最初にして最大の急所が出てきました。

駅名に「函館」が付いているものの、新函館北斗駅は函館からは離れた内陸部にあります。

地図で見ても分かるように、これは明らかに将来の札幌延伸を見据えた位置設定。

もし、函館駅方面に向かっていたら、そこで行き止まりになってしまい、方向転換が必要となります。函館の中心部へ行くのには便利ですが、札幌直通の列車が走り始める時のことを考えると、所要時間のロスになるルート選定は困難です。やむを得ない選択でした。

函館-新函館北斗の距離は17.9kmです。ほかの地方に当てはめると、首都圏なら東京-川崎間(18.2km)、関西圏なら神戸-明石間(19.4km)に近い距離。長距離を移動してきて、さらに目的地まで移動を重ねる距離としては、少々長めの印象があります。

秘孔その2=在来線アクセス

新函館北斗駅は、函館駅から遠い。

ということで、両駅間を結ぶ「はこだてライナー」を運転しますーというのが、JR北海道の触れ込みでした。

この「はこだてライナー」がくせ者。

新幹線開業直前(2015年3月改正)と、現在(2019年3月改正)の函館→新函館北斗間時刻表を午前中だけ抜き出して比較してみたのが、下の表です。

まず分かることは、「はこだてライナー」がすべて「快速」というわけではないこと。表の中では、むしろ各駅停車の方が多いぐらいです。

それはなぜかということで、新幹線開業前の時刻表と並べた意味がここにあります。「快速」ではない「はこだてライナー」は、かつては函館-七飯間運転だった列車が多いのです。

現在の時刻の方には、新函館北斗駅で接続する新幹線上り東京方面の発車時刻を載せました。「はこだてライナー」の時刻と照らし合わせると、函館発7:47→新函館北斗着8:09の「はこだてライナー」に接続する列車がないことが分かります。この「はこだてライナー」は、新函館北斗で折り返し8:14発の「はこだてライナー」として函館に向かいますが、この列車にも、接続する下り新幹線列車がありません。

これら上下の謎な「はこだてライナー」は、新幹線開業前は土曜休日運休の函館-七飯間の普通列車だったものです。時間帯と「土曜休日運休」から分かるように、通勤通学需要に対応する列車だったことは明らか。こういった列車が、「はこだてライナー」の中に紛れ込んでいます。

もともと地元の足として使われている列車なので、新幹線利用客専用と思って「はこだてライナー」に乗ったら、函館-七飯間で地元客が結構乗ってくる…というシーンもありそうです。

函館-新函館北斗の移動には、「はこだてライナー」以外にも、特急「スーパー北斗」が利用できます。ただし、新幹線との接続は札幌方面がメインで考えられているので、必ずしも新幹線に乗り継ぎやすい時刻設定とは限りません。また、特急なので乗車すれば特急料金(指定席:830円 自由席:310円※2019年8月現在)がかかります。新幹線との乗継割引は効くので、新幹線特急券と同時購入なら半額にはできます。

秘孔その3=同一平面乗り換えの罠

新函館北斗駅では、新幹線も地平にホームが造られました。その構造を生かして、新幹線と在来線のホームを並べて設置し、1Fの乗換改札を通ればエスカレーターや階段を使うことなく乗り換えが可能ーというのが、この駅のウリでもあります。

これは、在来線ホーム側から見た1F乗換改札。改札の向こうは新幹線ホームです。

ただし、1F乗換改札が直接使えるのは、

新幹線=11番ホーム(主に上り列車の発車ホーム)

在来線=1番ホーム(はこだてライナー発着)、2番ホーム(函館本線)

に限られます。

函館方面からやって来て、新函館北斗駅で新幹線上り列車に乗り換える場合には最適な配置です。その逆に、新幹線下り列車で新函館北斗駅に到着すると、降りるのは12番ホームなので1F乗換改札は使えません。2Fに上がって、2F乗換改札を使うことになります。

新函館北斗駅にまつわる事情を知らずに新幹線に乗ってきた人は、車窓で一旦見えた函館山が遠ざかっていくことに愕然としたあと、駅で降りて「乗り換えが便利じゃなかったのか!」と二重の衝撃を受けるわけです。

秘孔その4=在来線はIC乗車券利用不可

新函館北斗駅、新幹線側はモバイルSuica特急券が発売されているのでIC乗車券対応の自動改札になっています。

一方で、在来線側はIC乗車券非対応の自動改札。理由は簡単で、JR北海道が函館地区にKitacaを導入していないから。仮に、函館まで行こうとして新函館北斗駅までの乗車券しか持っていない場合は、新函館北斗駅で函館までの紙の乗車券を買う必要があります。東海道・山陽新幹線のEX-ICのように、新幹線乗降駅の乗換改札でEX-ICと別のIC乗車券を重ねて改札通過…といったことは、新函館北斗駅ではできません。

函館地区でややこしいのは、函館市電や函館バスはIC乗車券「ICAS nimoca」を導入していて、交通系ICカードの全国相互利用に対応していることです。JR北海道も、函館-新函館北斗間だけでもKitacaを導入すればよいと思いますが、今のJR北海道にそこへ投資する余力はないのでしょうか…。

まとめ

このように、新函館北斗駅にはケンシロウが戦えば容易に突かれる秘孔が数多くあります。しかも、それらは新幹線開業から3年以上過ぎてもそのまま残っているというのが、残念でもあります。

一度こういった不便を体験すると、せっかく新幹線を使った利用客も飛行機に戻ってしまうのではないでしょうか。2031年の札幌延伸までは「新幹線の北のターミナル」として機能し続けるので、いろいろ工夫をして少しでも使いやすくなればよいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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