【北陸新幹線】違う名前で呼ばれていた頃

台風19号被害のニュースで頻繁にとりあげられた「北陸新幹線」。

そういえば、以前は違う名前で呼ばれていたような…とふと思った人はいませんか?

というわけで、今回は北陸新幹線の呼び方の変遷をたどります。

法律上は「北陸新幹線」

まず、法律上の名前をおさらいします。

全国新幹線鉄道整備法の規定に基づいて1973年に決められた「新幹線鉄道建設に関する整備計画」では、建設線の名称が「北陸新幹線」、区間は「東京都-大阪市」(東京都-高崎市間は上越新幹線と共用)とされています。

▼佐賀県「西九州ルートの経緯:九州新幹線西九州ルート」 https://www.pref.saga.lg.jp/shinkansen/kiji0039655/index.html

(ページ内、整備計画の資料ファイルへリンクあり)

よって、法律上の名前は、現在営業中の東京-金沢間だけでなく、現在建設中の区間、計画中の区間も含めて「北陸新幹線」です。

「長野新幹線」

北陸新幹線は、1997年10月1日に高崎―長野間が開業しました。

しかしこの時、JR東日本は旅客案内上の名称として、「北陸新幹線」を使いませんでした。なぜかというと、

●首都圏から北陸地方への鉄道ルートは、上越新幹線-ほくほく線-北陸本線が主要ルートである(1997年3月にほくほく線開業)

●一方、新幹線は北陸地方へは達していない(1997年当時、長野以遠は一部区間のスーパー特急方式での建設が決まっていたのみ)

●よって、首都圏から北陸地方へ向かう利用客が間違って乗らないように、「北陸新幹線」とは違う名前を使う

 

ということでした。

そこで出てきた名称が、「長野新幹線」です。

ただこの名称、東京発の下り列車では問題ありませんが、長野発の上り列車だと「『長野新幹線』の東京行」という不思議な案内になってしまいます。

そこで、こんなルールになりました。

●首都圏各駅の構内表示や列車時刻表→「長野新幹線」

●安中榛名駅や長野県内各駅の構内表示→「新幹線」

●駅や車内の放送→「長野新幹線」

 

1997年10月4日、開業直後の長野駅新幹線ホーム。発車案内板には単に「新幹線」とだけ書かれています。

こうして、案内上は「北陸新幹線」が封印された形でのスタートとなりました。

 

▼(参考)「北陸新幹線ダイヤを発表 長野まで最速79分 しなの鉄道2割増」(1997/07/26付 信濃毎日新聞)https://www.shinmai.co.jp/feature/olympic/199707/97072604.htm

 

新幹線開業後は、徐々に「長野新幹線」の名称が浸透。「長野新幹線」は使われなくなっていきました。まるでかつての「E電」のように、案内表示からはフェードアウトしていったのです。

意外に遅くまで残っていたのは、東京駅の東海道新幹線ホームです。2000年1月撮影。

JR東日本側でも、高崎駅で2001年6月に撮影した写真が残っています。

いずれも、日本語表記は「長野新幹線」ながら、英語表記は普通に「Nagano Shinkansen」なのが苦労の跡を偲ばせます。

 

「長野新幹線」

こうして、開業前後に少々遠回りしましたが、2015年の金沢延伸までは案内上もっぱら「長野新幹線」と呼ばれるようになりました。

ただ、前述の経緯があったので、中には「長野新幹線」の面影を残すものも。

1999年5月に大宮駅で撮影した写真では、

ぱっと見で「上越・長野新幹線」ですが、よく見ると「長野」の右側に「」を消した跡が残っています。

「北陸新幹線(長野経由)」

2015年3月に長野-金沢間が開業し、新幹線はついに富山県・石川県へ到達。同時にほくほく線経由の在来線特急は廃止となるので、首都圏-北陸間のメインルートは新幹線経由となり、ここに「北陸新幹線」の呼び名を避ける理由はなくなりました。

しかし、改称について長野県が難色を示しました。「長野新幹線」の名称が定着しているので、ぜひ「長野」を残して欲しいと。

とはいえ、「長野新幹線」のまま金沢まで走らせると、逆に混乱を招きます。法律上の正式名称である「北陸新幹線」の方が妥当といえます。

そこでJR東日本は、路線名称は「北陸新幹線」に改めた上で、首都圏の駅構内での案内において、「北陸新幹線」の後ろに「(長野経由)」を付けることにしました。

▼(参考)「北陸新幹線、4種類で運行 案内に「長野経由」表示」(2013/10/02付 日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD020OC_S3A001C1TJ0000/

長野県もこの対応に納得し、「長野」にまつわる路線名称の問題は決着しました。

JR東京駅などでは、「(長野経由)」付きの案内を見ることができます。

金沢開業当日の2015年3月14日撮影。

「秋田」と「上越」の間に思わせぶりな空間があるのは、この翌年に開業した北海道新幹線のために「北海道」が既に書かれた案内板にしたからです(開業までは隠されていた)。

2019年10月現在では、この通り。

ほかにも、発車案内板など、至るところで「北陸(長野経由)新幹線」が使われています。英語表記も「Hokuriku (via Nagano) Shinkansen」ときっちりフォロー。

長野経由以外の「北陸新幹線」は存在しないので、「(長野経由)」は経由地を示すための念押しの表現になります。確かに長年「長野新幹線」を使ってきたので、地理に疎い利用客にとっては迷わずに済みそうです。

なお、延伸区間各駅の案内表示では、単に「新幹線」とだけ書かれています。金沢駅で2015年3月14日撮影。

北陸新幹線以外に新幹線の路線が通っていないので、これでも案内上支障はないでしょう。

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