【N700S】報道向け試乗会ニュースでは触れられていない、将来の話
10月30日、JR東海の新幹線新型車両「N700S」が報道関係者向けに公開され、多数のニュース記事があがっています。
N700S報道向け試乗会の記事いろいろ
記事をいくつか拾ってみると…
-2019/10/30付 中日新聞
横揺れ少ないグリーン車、防犯カメラ強化 新型新幹線N700S試乗会
-2019/10/30付 産経新聞
-2019/10/30付 朝日新聞
JR東海N700S、東海道新幹線東京~豊橋間で乗車 – 車内設備も公開
-2019/10/30付 マイナビニュース
各社報道をまとめると、
●2020年7月までに5編成を投入し営業運転開始。2022年度末までに40編成投入
●東海道新幹線用は「16両編成1323席」の原則を維持(12両や8両にも組み替えは可能)
●「フルアクティブ制振制御装置」導入で乗り心地向上(グリーン車と一部普通車)
●客室内の防犯カメラを増設(従来の1両2台→1両6台へ)
●客室自動ドア上部の案内表示装置を大型化
●普通車にも全座席にコンセント設置、フリーWiFiにも対応
といったところが報じられています。
700系とN700系の営業初列車
「13年ぶりのフルモデルチェンジ」という触れ込みなので、N700A(2013年2月営業運転開始)はマイナーチェンジの扱い。
前回のフルモデルチェンジは2007年7月営業運転開始のN700系ということになりますが、この時の営業初列車(7月1日の「のぞみ99号」)に、品川〜名古屋間乗車しました。
(2007/07/01@JR品川駅)
品川駅ホームで行われた出発式には、早朝にもかかわらず多くの人が駆け付けました。式の模様を撮影しようと掲げられているデバイスが、軒並みデジカメというのが時代を感じさせます。今ならスマートフォンが多数写り込むことでしょう。
さらにその前のフルモデルチェンジは、今や東海道区間では風前の灯火となった700系になります。この営業開始初列車(1999年3月13日の「のぞみ3号」)も、東京〜広島間で乗車しました。
(1999/03/13@JR東京駅)
来年7月のN700S営業運転初列車も、ぜひ記念に乗っておきたいものです。
N700Sについて報道では触れられていない、将来の話
さて、N700Sが今後新製投入されていくと、東海道・山陽新幹線の車両の陣容には当然変化が生まれます。それに従って、今後いろいろな出来事が予想されます。
一連の報道では触れられていない、将来起こりそうな話を挙げていくと…
N700Sが置き換えるのはN700系
2019年3月改正時点で未だ現役の700系C編成(JR東海所有)は6本(「新幹線EX Vol.52」による)。2020年春までにこれらは全廃予定ですが、これを置き換えるのは、2019年度が増備最終年であるN700Aです。
東海道新幹線は大規模な増発を行っているわけではなく、N700Sの投入によって代わりに置き換えられる車両があるはずです。順番からいけば、それはN700系(JR東海のX編成)ということになります。
東海道新幹線の車両は、おおむね新製後12〜13年で廃車となります。2007年に営業運転を開始してから2020年は丸13年で、ちょうどN700系初期車の廃車時期に一致します。
フルモデルチェンジこそしていますが、同じN700系グループどうしで廃車置き換えが行われるのは、国鉄時代に0系を0系1000番代・2000番代で置き換えていった状況を思い出します。
リニア中央新幹線開業まではN700S増備が続く
品川-名古屋間で建設が進められているリニア中央新幹線の開業は2027年。N700S投入計画がアナウンスされている最終年・2022年度末(2023年春)の4年後にあたります。
リニアが開業すれば、東海道新幹線はリニアに置き換わる形で東京-名古屋間の運転本数が減ることが予想され、そうなると必要な車両数も現在よりは少なく済むことになります。ちょうどこの頃には、2012年までに新製されたN700系(JR東海の場合はX編成80本)は経年廃車が進んでいるので、車両新製のペースを抑えれば車両数は減ります。
実際には、N700Sの40編成だけでは車両が足りなくなるので、2023年以降も新製投入が続くと思われます。ただ、今回形式名に「最高の(Supreme)」を示す”S”を付けたほどなので、新製投入されるのは引き続きN700S(またはそのマイナーチェンジ版)となるでしょう。
JR西日本が8両編成のN700Sを新製し、500系と700系を置き換える
JR東海同様、JR西日本の700系3000番代16編成(B編成)も2020年春までにはN700Aによって置き換えられる予定です。残る700系は「ひかりレールスター」用に2000年から投入された7000番代(E編成)のみ。現在は、山陽新幹線で主に「こだま」に使われています。
(2018/05/05@JR岡山駅)
JR西日本は、次期車両として独自開発は行わず、JR東海が開発したN700Sを採用する方針といわれています。
JR西日本、山陽新幹線で「500系」後継車開発せず 柔軟な車両編成も視野に「N700S」採用
-2018/05/05付 日刊工業新聞
N700SはJR東海は16両編成を投入しますが、8両のような短い編成も組めるように設計しています。加減速性能に優れたN700系シリーズを各駅停車の「こだま」に投入すれば、駅間を早く逃げ切れるので、「みずほ」「のぞみ」など速達列車のダイヤに余裕が生まれ、スピードアップや増発の余地を生むという効果があります。
JR西日本でも今後東海道直通用のN700系(K編成16本)の廃車が始まっていきますが、これを置き換えるためのN700Sとは別に、山陽新幹線内ローカル運用向けのN700S 8両編成を新製し、700系E編成を置き換えていくことが予想されます。
で、先ほどのニュースの見出しに「500系」という文字が含まれていました。700系同様、500系V編成も、今後N700Sによって置き換えられることは十分考えられます。
(2018/05/05@JR岡山駅)
東海道直通「のぞみ」運用から撤退し、8両編成に組み替えられて主に山陽新幹線「こだま」運用に就いている500系ですが、近未来的な外観は今でも高い人気を誇り、全面ラッピング編成も現れて彩りを添えています。
しかし、最終増備年は1998年で、既に全車両が経年20年を超えています。山陽新幹線内の運用に徹しているので累積の走行距離が「のぞみ」運用時代ほどは伸びていないとはいえ、2020年代に入ればいつ廃車されてもおかしくありません。
これらの置き換え相手も、おそらくN700Sとなるでしょう。
もし、500系V編成と700系E編成もN700Sで置き換えれると、東海道新幹線に続き山陽新幹線も「N700系タイプ」の車両に統一されます。山陽新幹線内は九州新幹線直通のN700系7000・8000番代が走っているので若干のバリエーションは残りますが、趣味的にはちょっと味気なくなるかも。
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