【広島駅】2025年に路面電車の停留場が高架で直結

山陽新幹線が通るJR広島駅、駅から市内中心部へ向かう時にお世話になるのが、広島電鉄の路面電車です。

現在、停留場は南口広場の地上にあってJRからの乗り換えは比較的便利なものの、肝心の電車が停留場を発着する際に駅前の交差点を通過しなければならず、信号待ちで時間が掛かることが多くなっていました。


また、広島駅の停留場から市内中心部へ向かうのに、最短経路の駅前通りではなく、猿猴橋町・的場町を回るルートである点も所要時間短縮の課題となっていました。
そこで、JR広島駅南口駅ビルの建て替えに合わせて、路面電車の線路を付け替え、駅ビルに高架で直接乗り入れる計画が進められることになりました。

広島電鉄株式会社申請の軌道事業の特許
~路面電車が高架で広島駅南口に進入し、JR広島駅と直結します~

-2019/11/27付 国土交通省プレスリリース(pdf)

(広島駅南口駅ビルASSEと駅前通り。ここに路面電車の新線が作られる。2009/05/02@JR広島駅)

路面電車の高架乗り入れ計画

計画では、路面電車を稲荷町停留場から経路変更し、駅前通り経由でまっすぐ広島駅南口駅前広場へ乗り入れ、停留場とその付近を高架化。これによって、

・広島市内中心部と広島駅間の乗車時間を約4分短縮
・広島駅での路面電車-JRの乗り換え時間を約1分短縮

が実現するとしています。

乗り換え時間の短縮がわずか1分…と軽んじることなかれ。JR広島駅は2017年に在来線部分が橋上駅化されていて、2階部分に南北自由通路と改札が設けられています。これと同じ平面に路面電車のりばができることは、重い荷物を持った旅行客や足腰に不安のあるお年寄りなどには大きな負担軽減になるはずです。

なお、現在のルートのうち、的場町-猿猴橋町-広島駅の線路は廃止。稲荷町-的場町間は皆実線と結ばれ、都心部の環状ルートの一部として整備されることになっています。

計画が完成する2025年は、広島にとって「原爆投下80年」という大きな節目にあたります。節目の年に鉄道の玄関口である広島駅の景色がどのように変わるのか、今から楽しみにしたいと思います。

新幹線駅に路面電車やモノレールが乗り入れている例

せっかく新幹線の駅ができても、駅から目的地までの交通機関へスムーズに乗り換えができないと、利便性が損なわれてしまいます。

こういった状況を解消すべく、新幹線ホームがある駅ビルに、中心部へ向かう別の交通機関が直接乗り入れる例もみられます。

小倉駅-北九州モノレール

JR小倉駅小倉城口の駅ビルは1998年に完成しましたが、この時に北九州モノレールが駅ビルに対して直角に乗り入れてきました。

(駅ビル内の広場からは、停車中のモノレールが一望。2003/04/05@JR小倉駅)

JRとの乗り換えは、いったん改札を出て、駅ビル内の広場を横切る必要があります。しかし屋内なので、雨に濡れることはありません。また、改札は同一平面にあります。

富山駅-富山地方鉄道軌道線

2015年3月の北陸新幹線金沢開業に合わせて、JR富山駅南口には装いも新たに駅ビルが開業。この時、従来は駅前の交差点を通っていた富山地方鉄道軌道線の路面電車が駅ビル内の停留場に乗り入れを開始しました。

(北陸新幹線をバックに、富山駅停留場を発車する軌道線電車。2017/09/16@JR富山駅)

新幹線の改札を出ると、真正面に路面電車の停留場が見えます。同一平面で垂直移動なしの乗り換えが可能。複数の系統が発着するので目的地によって乗る電車を見極める必要がありますが、それさえクリアすれば非常に便利な構造です。

なお、路面電車の富山駅ビル乗り入れ計画は2段階に分かれていて、現在は第1段階。そして、第2段階は完成が間近に迫っています。かつてのJR富山港線をLRTに転換して営業している富山ライトレールが、2020年3月21日から乗り入れを開始します。

JR富山駅は、新幹線の開業に続いて在来線の高架化工事が進められました。2019年に高架化が完成したあと、今度は富山駅の北口で止まっていた富山ライトレールの線路を在来線高架ホーム下に伸ばし、富山地方鉄道軌道線と接続する工事が行われています。

これが完成すると、富山ライトレールが富山駅停留場に発着。そればかりではなく、富山地方鉄道軌道線との直通運転が開始される予定です。同時に南北自由通路も完成し、相互の行き来が不便だった富山駅の南北間の移動が飛躍的に便利になります。

 

このほかにも、駅ビル直接乗り入れとまではいきませんが、九州新幹線の熊本駅・鹿児島中央駅では、それぞれ熊本市電と鹿児島市電の停留場がなるべく駅ビルに近くなるよう、線路の付け替えや停留所位置の変更などを行っています。こうした各地での利便性向上の取り組みには、今後も注目すべきでしょう。

 

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