【青函トンネル】「新幹線専用」にすることは断念へ

北海道新幹線のうち青函トンネルを挟む区間は、以前の記事で触れたように、在来線の貨物列車と線路を共用しています。そして、貨物列車との共用が新幹線列車のスピードアップを阻んでいう事情も記事で説明したとおりです。

この問題について、きょう北海道放送(HBC)のニュースで、

青函トンネル区間の貨物列車全面撤退“断念” 北海道新幹線との共用走行継続を検討 国交省

という記事が出ました(記事リンク)。

記事によると、国土交通省は北海道新幹線の札幌延伸時に、青函トンネルの高速化を実現する対策として「貨物列車の全面撤退」を検討していたものの、

・全面撤退しても新幹線の時間短縮効果は16分に留まる

・物流業界から反発が相次いでいる

ことを踏まえて、札幌延伸後も貨物列車を一定程度残す方向で検討に入ったーとのこと。

青函トンネルは、新幹線や豪華寝台列車といった、旅客輸送の面でよく話題になります。

しかし、1988年の開業以来、大きな役割を果たしてきたのは、「本州-北海道間の貨物輸送の大動脈」。

これについては、国土交通省のその名も「青函共用走行区間等高速化検討WG」で、JR貨物の資料に詳しく説明されているので参考になります。主要なデータを紹介すると、

・北海道-本州間陸上貨物輸送の鉄道シェア(平成26年度)は、北海道発が49%、北海道着が45%

・北海道発主要農産品の輸送における鉄道シェア(平成26年)は、たまねぎが62%、馬鈴薯が38%

・青函トンネルを通る列車本数(2017年4月時点)は、臨時列車を含めて旅客34本/日に対して貨物51本/日

 

と、貨物輸送における青函トンネルの重要性がよく分かります。

もし、青函トンネルから貨物列車を全面撤退させるとなれば、鉄道が担っていた役割をトラックや海運、航空機といったほかの輸送手段に移すことになります。しかし、上下51本分の貨物列車の輸送力をこれらで維持するのは、普通に考えてかなり難しいと思われます。

一方で、先日北海道新聞にはこういう記事が出ていました。

「貨物新幹線」検討 青函トンネルなどで国交省 札幌-東京4~7時間短縮

(2019/07/11付北海道新聞)

列車1本当たりの輸送力は小さくなりますが、その代わりに、新幹線区間では現在の旅客列車同様の高速運転ができるので、大幅な時間短縮が実現。将来的に東北新幹線を走る車両がすべて最高320km/h運転可能な系列(E5/H5・E6系やその後継車両)に統一されれば、東京-大宮間は難しいにしても、大宮より北側には毎時1〜2本の「貨物新幹線」を運転できそうです。

2031年春に予定されている新幹線札幌延伸まではあと12年ありますが、貨物輸送に関する設備の建設、車両の新造などにかかる時間を考慮すれば、議論できる時間は意外に短いともいえます。青函トンネルの使い方について、皆さんが知恵を絞って、どういう結論になるのか、これからも注目したいものです。

 

 

 

 

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