【エクスプレス予約】「e特急券」料金設定の謎

東海道・山陽新幹線の特急券インターネット予約サービスとして普及しているのが「エクスプレス予約」。

このサービスの最大の特徴は、会員になると通常料金よりも割安の価格で東海道・山陽新幹線に乗ることができるという点です。

例えば、東京-新大阪間の「のぞみ」普通車指定席を片道利用する場合の運賃・料金を比較すると、

通常期 繁忙期 閑散期
通常運賃・料金 14,720円 14,920円 14,520円
エクスプレス予約

(EX予約サービス)

13,620円 13,620円 13,620円
割引額 ▲1,100円 ▲1,300円 ▲900円

と、どの期間でも割安になります。

普通車自由席の場合はどの期間でも13,870円なので、「自由席よりも安く指定席に乗れる」ことになります。また、会員の年会費は1,100円なので、通常期に東京-新大阪間を片道1回利用すれば元が取れてしまいます。

特に東海道新幹線は使える割引きっぷの種類が少ないので、安く新幹線に乗りたいという人には重宝するサービスです。



e特急券の料金設定

今回採り上げるのは、エクスプレス予約のうち、乗車券と特急券を別々に発売する場合の特急券「e特急券」の料金設定です。

そもそものきっかけは、下の2区間の比較をした時に感じた疑問です。

e特急券の料金(普通車)
東京-新大阪(運賃計算キロ:552.6km):4,910円
新大阪-博多(運賃計算キロ:626.7km):3,700円

距離の長い「新大阪-博多」の方が、「東京-新大阪」よりも安く設定されています。通常料金(普通車指定席・通常期)は、「のぞみ」(新大阪-博多間は「みずほ」含む)乗車の場合どちらも5,810円なので、明らかに「新大阪-博多」の方を大きく割り引いています。

それでは、東京・新大阪から各駅までの料金がどのように設定されているか、グラフ化してみました。

赤色の折れ線が「東京発下り」の各駅までの料金、青色の折れ線が「新大阪発下り」の各駅までの料金です。

灰色の点線は、他の各駅相互間の料金も含めた上で考えられる、標準的な料金設定です。

グラフを見ると、やはり「新大阪発下り」の料金設定に目立つ特徴が見られます。標準的な設定だと「301km〜400km」の区間(新大阪-東広島・広島・新岩国)は4,130円となるところ、3,700円に抑えられています。

また、それよりもさらに長い距離の区間もずっと3,700円のままで頭打ちとなっています。

今度は、「博多発上り」の料金設定とも比較してみると、

やはり、「博多発上り」も301km以上(東広島以遠)で3,700円頭打ちです。ただ、上りの場合は京都まで低めの設定になったあと、次の米原でいきなりドーンと上がってしまいます。

料金設定から透けてみえる営業政策

このような料金設定には、明確な意図があるはずです。いろいろと考察していきましょう。

山陽新幹線区間

おそらく、山陽新幹線区間については特に京阪神-福岡間で飛行機との競争を意識せねばならず、自ずと割安の料金設定になっているのでしょう。

(「みずほ」「さくら」も山陽新幹線区間はエクスプレス予約利用可能。2016/03/13@JR博多駅)

大阪府-福岡県間の旅客流動は、最新の調査(平成29年度旅客地域流動調査)でみるとJRのシェアが8割以上となっていますが、航空各社が大幅な割引運賃設定で攻勢をかけていた2000年頃は6割台に留まっていて、依然として飛行機は手強い競争相手といえます。

対飛行機という観点では、東京-岡山・広島間も競争関係にあります。山陽新幹線内の料金設定ほど派手な値引きにはなっていませんが、「のぞみ」普通車指定席利用の場合の特急料金からの割引率が、東京-名古屋・京都・新大阪では16%なのに対し、東京-岡山20%、東京-広島19%とやや大きめになっています。これは、飛行機との競争関係の現われともいえます。

東京-熱海・三島間

これまでは山陽新幹線絡みの区間を見てきましたが、実はグラフをよく見てみると、東海道新幹線にも特徴的なところがあります。

東京からの近距離区間を見ると、最初の料金段階(100kmまで)である1,760円が三島までになっています。しかし、東京-三島間の距離は120.7km、1駅手前の東京-熱海間の距離も104.6kmと、いずれも100kmを超えています。他の区間だと「101〜200km」の料金段階2,530円へと上がってしまうところ、ここだけ低く抑えられている格好です。

この背景には、東京発着「こだま」の近距離利用促進があるのではないでしょうか。東京-熱海間は在来線がJR東日本なので、JR会社間の競争関係が成立している点も影響していそうです。

東京・品川・新横浜-米原間

もうひとつ、東京-米原間(445.8km)も、本来ならば「401〜500km」の4,570円となるはずのところ、4,150円(東京-名古屋・岐阜羽島とわずか20円違い!)に抑えられています。品川-米原間、新横浜-米原間も同様です。

ここだけ低く抑える理由としては、首都圏-北陸間の利用客を米原経由に誘導する狙いがありそうです。エクスプレス予約でこれだけ割り引くと、例えば東京-福井間の特急料金(新幹線「ひかり」+特急「しらさぎ」のいずれも普通車指定席利用)は

通常料金(乗り継ぎ割引適用、通常期)
東京-米原:5,150円
米原-福井:860円 合計6,010円

エクスプレス予約でe特急券利用(通常期)
東京-米原:4,150円
米原-福井:1,730円 合計5,880円

となって、在来線の乗り継ぎ割引が効かない点を差し引いても割安となります。現在のダイヤ設定も上下「しらさぎ」が米原駅で「ひかり」に接続しやすくなっています。

 

ここまで見てきたe特急券の料金にまつわる事情は、EX予約サービスでの料金にも同様に反映されています。ただ単純に安いというだけではなく、結構奥が深い料金設定といえそうです。

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