【東海道新幹線】もしも鈴鹿山脈越えルートだったら

この週末の3連休(10月11〜13日)、三重県の鈴鹿サーキットではF1日本グランプリが開催されます。

昨年は、決勝日には8万1千人、3日間合計ではのべ16万5千人が来場(出典:F1-Gate.com)。

かつてのようなブームは去り、ここ数年は地上波でのテレビ中継もなくなったとはいえ、国内外から多数のファンが押し寄せるビッグイベントであることには変わりありません。

現在のJRアクセスは伊勢鉄道ルート

鈴鹿サーキットへの鉄道アクセスはというと、大きく分けてJR-伊勢鉄道ルートと近鉄ルートの2つがあります。そのうちの1つ、JR-伊勢鉄道ルートの場合、最寄り駅はその名もズバリ「鈴鹿サーキット稲生」駅。

伊勢鉄道は、国鉄伊勢線を第3セクターに転換した路線。四日市(路線の起点は河原田)と津の短絡ルートとして、現在でも特急「ワイドビュー南紀」や快速「みえ」といったJRの列車が多数走っています。

ただ、非電化なので電車は走れません。また、名古屋-河原田間のJR関西本線は単線区間が多いので、列車の運転本数には限界があります。

そんな制約を顧みず、F1開催期間中は多数の臨時列車が運転されます。現在は車種もかなり整理されましたが、かつては国鉄型のディーゼルカーをかき集めて長い編成を組んだり、客車列車(!)による臨時快速が運転されたりと、バラエティに富んでいました。

東海道新幹線 幻の「鈴鹿山脈越えルート」

話は変わって…

東海道新幹線は、名古屋-京都間を関ヶ原回りで建設されました。在来線の東海道本線や名神高速道路も関ヶ原を通るので、現在ではごく当たり前のこととして受け入れられています。

しかし、計画時には、これとは別に、鈴鹿山脈を越えるルートも検討されたのです。

名古屋から岐阜県には向かわず、三重県に入り、鈴鹿山脈の下をトンネルで滋賀県へ抜けるというもの。

これだとなんだか遠回りではないか…とも思いがちですが、実は距離的に遠回りなのは関ヶ原回り。営業キロで比較すると、

関ヶ原回り→名古屋-岐阜-米原-京都 147.6km

鈴鹿山脈越え→名古屋-亀山-柘植-草津-京都 138.8km

で、鈴鹿山脈を越えるルートの方が短いのです。

関西本線の亀山-柘植-加茂間は、現在でこそディーゼルカーがのんびり走る”ローカル線”となっていますが、かつては名阪間の連絡ルートとして優等列車も走っていました。”本線”と名乗っているのは、そのなごりです。

なお、この距離関係は高速道路も同様です。

名神高速道路と新名神高速道路では、豊田JCT-草津JCT間で比べた場合、鈴鹿山脈を越える新名神経由の方が約37km短くなっています(出典:NEXCO中日本)。

東海道新幹線の建設に当たっては、東京-大阪間をなるべく短い距離で結ぶことが求められました。その要請のもとで、名古屋-大阪間のルートも最短距離となる鈴鹿山脈越えと、東海道本線と同じ関ヶ原回りとが比較検討されました。

結果、関ヶ原回りになったわけですが、その最大の決め手は、鈴鹿山脈越えだと、どのルート案でも約13kmでかつ大阪方面に向けて上り一方勾配のトンネルを掘る必要があり、限られた工期に収まらないとされたからです(出典:角本良平著「東海道新幹線」中公新書)。

「鈴鹿山脈越え」新幹線と鈴鹿サーキットのアクセスは

これがもし鈴鹿山脈越えで建設されていたら、新幹線のルートはどうなっていたでしょう?

現在の地図を見ながら想像してみましょう。

ルートとして想定するのが簡単なのは在来線との並行です。

関西本線-草津線に並行するルートとすると、

名古屋-四日市-亀山-貴生川-京都

あたりでしょうか。

四日市-亀山間の駅間距離が、現在の東海道新幹線に比べてやや短めかもしれません。しかし、建設当時は伊勢線がなく、名古屋から紀伊半島方面へ向かう列車はすべて亀山経由でした。これらの列車とのアクセスを重視すれば、亀山にも新幹線駅を作ったのではないでしょうか。

現在の東海道新幹線のダイヤを参考にすると、四日市や亀山には、「のぞみ」は停車しませんが、「ひかり」「こだま」がそれぞれ毎時1本程度は停車するでしょう。

そして、両駅とも、鈴鹿サーキットへのアクセス拠点として機能することが期待されます。

F1や8耐などビッグイベント開催時には、

四日市駅…伊勢鉄道直通列車に乗り換えて鈴鹿サーキット稲生駅へ

亀山駅…三重交通の直通バスで鈴鹿サーキットへ

といったアクセスルートが開かれて、近鉄白子駅経由にも劣らない輸送力を発揮した…かもしれません。

リニア中央新幹線では

ここまでは想像の世界ですが、最後に、これが現実のものになるかもしれないという話を。

リニア中央新幹線の名古屋-大阪間のルートは、まだ決まっていません。が、東海道新幹線と同様、なるべく最短距離を結ぶという要請から、鈴鹿山脈越えのルートも候補に挙がっているようです。

実際に、三重県では「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」が、リニア早期建設と県内への駅設置を求めて活動を行っています。

もしこのルートでの建設となれば、三重県内にリニアの駅が設置される可能性が高まります。

リニア名古屋-大阪間開業は相当先の話だし、仮に駅ができるにしても、どこにできるかは分かりません。ただ、夢を見るだけなら自由なので、「リニアに乗って鈴鹿サーキット最寄り駅まで移動」なんていう未来絵図も描いてみたいものです。

コメントを残す