【台風19号】あまり全国ニュースになっていない、三陸鉄道の被害

先月、東日本中心に大きな爪跡を残した台風19号。鉄道網もひどいダメージを受けました。

ただ、全国ニュースでもっぱら時間を割かれたのは、北陸新幹線の長野新幹線車両センター浸水や、上田電鉄の千曲川橋梁落下、箱根登山鉄道の山岳区間の被害だったような気もします。

実はこのほかにも、深刻な被害を受けていまだ復旧できていない事業者、路線は数多くあります。

三陸鉄道もその1つ。

三陸鉄道の歴史

今回の被害について触れる前に、簡単に三陸鉄道の歴史をおさらいします。

宮城・岩手・青森の3県にまたがる三陸沿岸には、古くから鉄道建設の計画がありました。

国鉄時代に順次建設が進められ、部分的に開通したものの、国鉄の財政悪化により建設が凍結。国鉄線としては沿岸の路線の全通は成りませんでした。

国鉄財政再建の過程で、これら開通していた国鉄線と、建設中だった路線とを引き受けて1984年に第三セクターとして発足したのが三陸鉄道です。途中に山田線を挟む形で、宮古-久慈間が「北リアス線」、盛-釜石間が「南リアス線」として開業しました。

国鉄の分割民営化後は、夏季限定で仙台-八戸間を走破する臨時快速列車「リアス・シーライナー」が運転されるなど、三陸沿岸で鉄路が1本に繋がっているメリットを生かした列車も設定されていました。

この状況が一変したのが2011年3月11日の東日本大震災。沿線を襲った大津波で壊滅的な被害を受けた三陸鉄道は、全線復旧までに3年を要しました。

(2014/04/06@三陸鉄道久慈駅)

また、同じく甚大な被害を受けたJR山田線の宮古-釜石間は、JRが復旧工事を行い、完成後に三陸鉄道に経営移管をする枠組みで復旧が進められました。

今年3月23日には実に8年ぶりに運転が再開され、旧山田線の区間も含めた久慈-盛間を「リアス線」として、三陸鉄道による一体運営が始まりました。

台風19号による被害

こうして新たなスタートを切った三陸鉄道に、再び試練をもたらしたのが台風19号の大雨被害でした。三陸鉄道の発表によると、路盤流出・土砂流入・のり面崩壊など線路の被害が計77個所にのぼり、全線の約7割の距離にあたる久慈-田老間、宮古-釜石間が不通となっています。

台風19号による三陸鉄道の被害状況、運行状況等について

-2019/10/24付 三陸鉄道プレスリリース

特に宮古-釜石間は、まさに運転再開されたばかりの区間。沿線ではラグビーW杯の試合開催で盛り上がっていた最中での再度の運休に、関係者や沿線住民の皆さんの落胆はさぞ大きいことでしょう。

今後の復旧見通しは立っていません。三陸鉄道のプレスリリースでは、

(1)  被害の程度、周囲の状況、当該区間の利用状況等を勘案し、優先度を見極めながら、復旧工事を進める予定。⇒ 被災箇所の現地調査を終え、現在、関係機関等と手法等について協議

(2)  復旧工事が完了次第、順次、運行区間を延伸の予定

としていて、復旧するにしても部分的に少しずつといった見通しを打ち出しています。

義援金

三陸鉄道では、寄付に関する多数の問い合わせを受けたことから、義援金の窓口を設けたことを発表しています。

台風19号に伴う三陸鉄道への寄付について

-2019/10/17付 三陸鉄道プレスリリース

また、ネット募金の口座も開設されています。

▼Yahoo!ネット募金「令和元年台風19号による三陸鉄道被災への支援募金(三陸鉄道株式会社)」

https://donation.yahoo.co.jp/detail/5242001/

2014年4月の全線運転再開時に、沿線の皆さんが本当にたくさん駅や線路沿いに集まって列車に手を振ってくれていたのを今でも思い出します。三陸沿岸の復興再生の象徴として、一日も早い復旧を祈っています。

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