【新幹線とは】この新幹線は「新幹線」?

前回、法律による「新幹線」の定義について紹介しました。

おさらいすると、 「全国新幹線鉄道整備法」(略して「全幹法」) 第2条の規定、

“ この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。 ”

です。

この定義を、世間一般に「新幹線」と呼ばれている路線に当てはめてみると、「東海道新幹線」「山陽新幹線」「九州新幹線」「東北新幹線」「上越新幹線」「北陸新幹線」は、問題なく全幹法にいう「新幹線」と言えるでしょう。

さて、いま挙げなかった路線についてはどうでしょうか?

山形新幹線

1992年7月に、東京-山形間(のちに新庄まで延伸)で運転を開始したのが「山形新幹線」。

東京-福島間は東北新幹線の線路を走り、福島-新庄間は、在来線(奥羽本線)の線路を走ります。

新幹線と在来線とでは線路の幅が違うので、そのままでは直通できません。なので、在来線の線路の幅を新幹線に合わせて広げる(一部区間は、レールを3本敷いて両方の幅に対応)工事が行われました。

さて、”その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる”の定義に山形新幹線は当てはまるのか?

答えは「No」。

在来線の線路を走る時は、改良したとはいえ、最高速度は130km/hしか出せません。法律上では、山形新幹線は「新幹線に直通する在来線の特急列車」です。

秋田新幹線

山形新幹線が「新幹線」ではないとなると、秋田新幹線も同じことが言えます。

こちらは、かつて特急「たざわ」が走っていた田沢湖線盛岡-大曲間と、奥羽本線大曲-秋田間のレール幅を新幹線直通に対応する工事を行い、1997年に運転を開始しました。

山形新幹線同様、在来線区間の最高速度は130km/hに抑えられているので、法律上の「新幹線」の定義には当てはまりません。

北海道新幹線

ここまでは、書籍でもよく触れられているところ。

最後にもう1つ、吟味しておきたい路線があります。それが、2016年3月に新青森-新函館北斗間が開業した北海道新幹線。

こうやって山形新幹線・秋田新幹線と並べると、実は共通点があります。

(1) かつて、在来線だった線路を使っている

(2) (1)の区間で、最高速度が200km/h未満である

 

(1)(2)とも、津軽海峡の海底を貫く青函トンネルを挟む区間を指しています。

この区間は、もともと1988年3月に在来線(海峡線)として開業。ブルートレイン「北斗星」「カシオペア」、特急「スーパー白鳥」などが運転されていましたが、北海道新幹線の開業に伴ってこれらの列車はすべて廃止となりました。

しかし、現在でも本州と北海道を結ぶ在来線の貨物列車が多数運転されています。上の写真は新幹線開業日(2016年3月26日)に奥津軽いまべつ駅で撮影したものですが、通過する新幹線列車とともに、手前の方に停車している赤い車体の電気機関車が見えます。これが貨物列車です。

そこで(2)の最高速度の問題がでてきます。この区間は、最初の開業が在来線だったとはいえ、ゆくゆくは新幹線も走れるようにということで、高速走行できる規格で作られました。なので、新幹線列車だけが行き交うのであれば200km/h以上の高速運転もできるのですが、青函トンネル内で貨物列車とすれ違う時に、風圧で貨車の積み荷のバランスが崩れるおそれがあるので、安全面から最高速度が160km/h(開業当初は140km/h)に抑えられています。

では、北海道新幹線は法律上の「新幹線」なのか?

答えはYESです。理由は、北海道新幹線が全幹法によって建設されたから。

全幹法は、東海道新幹線の成功を受けて、全国に新幹線網を築くために制定されました。この第4条1項に、

国土交通大臣は、鉄道輸送の需要の動向、国土開発の重点的な方向その他新幹線鉄道の効果的な整備を図るため必要な事項を考慮し、政令で定めるところにより、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線(以下「建設線」という。)を定める基本計画(以下「基本計画」という。)を決定しなければならない。

と規定されています。

ここでいう「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として、1972年に3つの路線が決まり、そのうちの1つが北海道新幹線(青森市-旭川市)です。

→ 昭和47年7月3日運輸省告示第243号(変更 昭和48年11月15日運輸省告示第465号)

また、現在北海道新幹線は札幌までの建設工事が進んでいて、札幌開業後は200km/h以上で高速走行できる区間がかなり長くなります(青函トンネル区間も、時間帯を区切って200km/hに最高速度を引き上げる計画あり)。そうなると、れっきとした「主たる区間を列車が200km/h以上で走行できる」路線となることでしょう。

まとめ

普段、何気なく「新幹線」と呼んでいても、いざ法律上の定義を持ってくると、なかなか奥深いものがあります。

そして、さらに、一般には「新幹線」と呼ばれていないのに走っているのは新幹線車両である、という路線もあります。それについては次の記事で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【新幹線とは】この新幹線は「新幹線」?” に対して1件のコメントがあります。

コメントを残す